パニック障害の原因
まず、不自然ということ。
「私たちの体を構成する細胞は1万年前と変わっていない」(藤田紘一郎「自然の恵みで免疫力アップ」より)
「動物にしろ、植物にしろ、仮にその生命が機械的構造を有しているとしても、それは昨日今日つくられた機械ではない。38億年をかけて改良を積み重ねた生命の歴史の完成形として存在しているのである。つまり、38億年の最適化の結果なのだ。」(福岡伸一「動的平衡」より)
この2つの引用から言えることは、我々の心や体というのは長い年月をかけて、地球の、「自然」の環境に適応するように作られているということです。
でも、特に先進国はここ数百年ほどの科学の発展によって、まったくもって「不自然」な世界になりました。
自動車・電車・洗濯機・炊飯器・掃除機などの開発や働き方の変化などによる圧倒的な運動の不足、添加物・工業食品などの台頭で「自然な食べ物ではなく化学合成された」ものを食べる日常、そして、これらが積み重なることによって起こる肥満・低体温・便秘などの体調不良が当たり前のように起こっています。
正直、こんな「不自然」な状態で、人間が本来持っている「自然治癒力」や「ホメオスタシス(恒常性)」という「自然」の力を発揮しろというのは無理があります。
これは、何らかの拍子に異常な状態になった時に、正常へと戻る力が大幅に弱まっているということです。
次に、弱々しいということ。
これは、時代性が大いに関係していることで、現代人全体(特に先進国)が弱々しくなっているということを言っているのであって、決してパニック障害の人だけが弱々しいということではありません。
裏を返せば、誰もが簡単に病気になってしまう可能性を秘めているとも言えます。
では、その時代性とはどういうものかを日本を例として説明します。
これも、安保先生の本が拠り所となるのですが、おおよそ僕らが知っている人類の歴史の始めから1945〜55年ぐらいまでは過酷な時代であり、交感神経(戦う神経)が優位で皆がやせ細りながら頑張った時代と言えます。
戦にしろ病にしろ簡単に人が死んでいき、ほとんどの人にとっては、「生存が唯一最大の生きる目的だったのである」(福岡伸一「動的平衡」より)という言葉がぴったりくる時代です。
個体としての強さは現代人が叶うはずもないことは容易に想像できます。
続いて、1955〜90年までは成長の時代です。
おだやかで豊かな時代になっていき、副交感神経(休む神経)が優位になります。
アレルギー疾患やうつ病なども出現しますが、今日よりも明日の方が良くなる「成長の時代」でしたので、いろんなものをおおらかに包み込む余裕があり、まだ弱々しさが爆発的に露見してしまうほどではありませんでした。
しかし、成長期の最後の花火である「バブル」がはじけて、日本は停滞、もしくは下降する国になります。
これが、1990年〜現在に至るまでです。
少子化、ゆとり教育などによる過保護、過剰な衛生活動などによって超副交感神経優位の時代になります。
これは、過敏という状態を我々に引き起きし、ちょっとしたことでもすぐに動じてしまう人間を作り出しています。
大まかに言えば、こういった時代背景により、我々は全体的に弱まっているということです。
では、最後に流行りでないこと。
これは、変化というものに関わります。
現代が変化が激しい時代ということは、僕がここで例を出さなくても異存のある人はいないと思います。
ドッグイヤー、マウスイヤーなんて言葉がありますが、今までの何年分、何十年分の変化が1年で起こってしまう時代です。
今後の世の中がどのようなものになっていくかはわかりませんが、ますます変化のスピードが早くなっていくということは間違いないでしょう。
そして、変化のスピードが早いということは変化の回数が多いということになります。
変化の回数が多くなると、変化に不安はつきものですので、それとともに「不安」を感じる回数も多くなっていくことになります。
人間は、たまの「変化」というのは良い刺激になることもありますが、やはり「不安」もつきまとうものです。
それが、しょっちゅう「変化」するとなると、しかも短期間で急激に「変化」の回数が多くなると、なかなか心も体も追いついていくことができません。
ということは、これからの時代は、変化のスピードがどんどん早くなり、「どんどん不安になる機会が多くなる時代」になっていくということです。
しんどい時代ですが、まず、この事実を認識しておくことは非常に重要なことです。
訳も分からず不安になっていくよりも、「そういう時代」なんだと認識していれば「不安」になる度合い、対処の仕方も変わってきます。
さて、今まで見てきたように現在の環境というのは、パニック障害の人にとっては辛い環境になります。
しかし、どうしようもないわけではありません。
原因は「不自然で、弱々しく、流行りでないこと」とわかっているのですから、それを改善していけばいいのです。
繰り返しになりますが、多くの人が「病気」に対して間違った理解をしていて、どこかにピンポイントの原因があってそれをピンポイントの対処で処理したがるのですが、それはありえないことです。
僕らの体は神経や血管やホルモンや神経伝達物質などで「全部繋がっていて」、それではじめて「まとも」に成り立っているものです。
レーシックで角膜を除去したり、インプラントで人工歯根を埋め込んだり、花粉症の治療で鼻の粘膜を焼くなんてことがありますが、一部の症状を解消するために簡単にそんなことやって、全体的なつながりは大丈夫なのかなというような疑問は常に持っておくべきなんです。
そして、やはり「病気」を改善していくには「自分の生き方」を変えていかなれけばならないのです。
大変ですが、ひとつひとつやっていけば、ちょっとずつ良くなっていきます。
では、次からは治療法として「自然に沿って、たくましく、流行りに乗ること」という項目に沿って見ていきましょう。
あとは、パニック障害にピンポイントな対処法もコッソリお教えします。
「パニック障害の治療法」に続く